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オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(7)

BL「運命の子拾いました」(7)


リクくんとメッセージのやりとりを始めて1ヶ月。返信は3日に1回くらいだが、リクくんだけ通知音を変えているので返事が来ればすぐわかる。ささっと返事をすると、10分後くらいに返事が来るので、またささっと返事をする。というような、どうみても自分だけが前のめりなやり取りになっている。恥ずかしい気もするが、どうしようもない。返事が速いのは変態行為にはあたらないはず。

思春期の頃、周りの人間が一生懸命やっていたのはこういうことだったのかと、35歳になって知った。同世代の人間からしたら青いと思われるのだろうな。まあどうでもいいことであるが。

リクくんとのやりとり。話が弾んだときや、彼の機嫌がいいときは、写真を送ってくれたりする。大体食べ物の写真だが、なかなか魔界の食べ物というのはユニークである。そういう写真を見るのも楽しいが、自分は是非ともリクくんが見たい。自撮りとか送り合うのが今の若者文化であるようなので、リクくんも送ってきてくれないかな、と期待したのだが、そういうこともなかった(そういえば彼は128歳だし、若者とカウントしていいのか微妙なところである)。

そろそろ顔が見たい。紳士的にメッセージを送ってきたが、それでは満たされないものもある。どうしても顔が見たい。あの丸っこい顔。小さい角に小さい羽、先のとがった尻尾、くるんとしたつむじ、ちょっと低めで自分を罵る声……想像するだけでかわいさ溢れていてたまらない。会いたい。

魔界に行く方法は知らないので、リクくんにこちらに来てもらおうとメッセージを送った。予想はしていたが、返事はなかった。残念極まりない。

少し、悲しかった。
確かに出会いは悪かった。カイさんから学んで、あとから振り返ってみると自分はまごうことなき変態である。未成年を家に連れ込み、あわよくば撫で回して連絡先を聞こうとするなど、通報されても仕方がない。あれはだめだった。

リクくんが怖がってしまったのも仕方がない。でも、できれば関係を立て直したいのだ。もしくは公園でリクくんを見つけたときに戻ってやり直したい……

ふと、昔の記憶がよみがえってきた。公園。公園での出会いといえば、自分の小さい頃、自分の方が公園で寝込んでしまい、助けられたことがあった。そのときは家族で旅行にいっていたのだけど、なれない場所で迷子になってしまい、やっと見つけた公園で疲れて寝てしまったのである。ようやく起きてみると、自分と同じような年頃の子ども二人が僕を見つめていた。そして、そのあと親に見つけてもらうまで一緒に遊んだのだが……

あのときの違和感。なんだったか。なにか不思議に思っていたような……

うーむ。もやもやしてきたので、リクくんの写真でも見よう。実は、カイさんにも内緒にしているのだが、リクくんの身分証の写真をこっそりスマホで撮って保存してあるのだ。これは自分でもアウトだと思っていたので誰にもいっていない。ちなみに、リクくんを拾った日は眺めることに必死で写真を撮ることを思い付けもしなかった。なので自分が唯一持っているリクくんの写真。少し昔のもののようで、より幼く見えるリクくん……この顔、この顔ではなかっただろうか。


昔、公園で出会ったのは、角や羽のついた子どもだった。そう、カイさんやリクくんのような。
そしてそのうちの一人は、リクくんにそっくりではなかっただろうか。

身分証のリクくんをじっと見つめる。……この子のような気がしてきた。身分証の更新日は28年前……丁度リクくんが100歳のときだ。そしてそのとき自分は7歳。旅行で迷子になったのも7歳のときだ。
他人の顔に興味がなかった自分が、珍しく思い出せる顔。それって、相手が悪魔だったからではないだろうか。


もし、もしあのときの子がリクくんなら。自分はものすごい運命を引き寄せたような気がする。


……あのときの公園にいったら、なにかもっと思い出せるだろうか。あのときの子がリクくんなら。どきどきしてきた。
週末に、行ってみよう。



週末。例の公園でぶらぶらする。記憶にあるより、大分寂れた公園。だけど、確かに自分はここに来たことがある。滑り台、ブランコも記憶にある。ジャングルジムで、3人で遊んだ記憶も。
羽の生えた少年二人と、自分。もう一人の子の顔は思い出せないけれど、角が生えていた子は、やっぱりリクくんだったと思う。

そうして記憶をたどりながらぶらぶらしていると、子どもが二人、ブランコで遊びだした。……あれはリクくんじゃないか!!!

興奮して声をかけたものの、未だ変態呼ばわりされ、しかもアッパーを食らった。しかし、久しぶりに見たリクくんの顔。やはり好みだ……と思いながら気を失ったのであった。



アッパーの衝撃から目覚めてすぐ。
リクくんとカイさんに問うた。あのとき遊んでくれたのはきみたちじゃないか?

カイさんの方は、「たぶんそうだと思う」と答えてくれた。そのとき一緒にいたのはリクくんだというので、やはり記憶の通り、リクくんと自分は過去にであっているらしい。運命だ。

……と盛り上がる自分をよそに、リクくんはものすごく不信感を顕にした顔をしていた。

「確かに昔、ここで人間の子どもと遊んだけど、変態……えっと、かずなりさんだという記憶はない」
「それに、あのときの子は変態じゃなかった。普通の子だったよ」

納得してくれないらしい。あと変態呼ばわりは変わらなかった。1ヶ月のやり取りでは変態の汚名返上は出来ていなかったようである。

「でもきっと、あれはリクくんだったと思う。人間の顔に極端に興味がない自分が覚えていた唯一の顔だ。そんなの、リクくんしかいない」

運命だと思うんだ。

どうにか伝えたくて、必死に説明する。運命だ。運命なんだ。

必死すぎて前のめりになりすぎていたらしい。リクくんとカイさんと一緒にいた不良っぽい男の子に押し戻された。

「昔会っていたからといっても、今は嫌われてるわけだろ?一人で運命感じてたってどうしようもなくね?」

ぐっさりきた。確かにその通りなのである。
リクくんにも運命だと思ってもらわなければ意味がないし、それよりも、自分のあのときの楽しかった記憶を肯定してほしかった。

「……まああのときの子がかずなりさんだとして、そのとき楽しかったのは事実です。でも、誠司さんのいうように、僕は運命は感じないし、あなたのことはこわい」

やはり、そうか。

「正直にいうと、メッセージのやりとりも負担でした。もう、ここで関係を切ってしまいたいです」


……そんなに負担になっていたなんて。すごく申し訳なかった。自分の身勝手な欲望のせいで、困らせていた。

……身を引くしかないと思った。


「負担になってしまって本当に申し訳ない。困らせるつもりじゃなかった。もう、連絡はしないよ」

ごめんね。


そう言って、自分とリクくんの関係は途切れた。