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オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(5)

「運命の子拾いました」(5)


カイにお願いされて、しぶしぶ連絡先を変態に教えた日。早速変態から連絡がきた。怖い。まだ変態ショックから抜け出せなかった僕は、一週間ほど放置していた。
でも一週間を越えた辺りから、流石に相手が変態とはいえ、返事しなくちゃならないよね……と思い、メッセージをチェックした。その内容がこれ。

「リクくん、連絡をくれてありがとう。今さらになるが、自分は間宮和成といいます。35歳で、証券会社に勤務中です。またリクくんのプロフィールも教えてくれないだろうか。返事待っています」

今さらにも程がある。
カイに指導を受けてやっとこさこのレベルである。……カイも大変だな。
まあとにかく、これで変態の名前はわかった。かずなりというらしい。

さて、返事をせねばならない。既読スルーでもいいが、最初からそれは失礼に当たるだろう。

ということで返事をしたのだが、どうせ僕のプロフィールは財布の中身を見られた時点で丸分かりだろうし、特に書くべきこともない。ささっと形式的にメッセージを返しておくか。

適当にぽちぽちとメッセージを打ち、送る。すると秒速で既読がついた。こわい!!

「既読スルーでも大丈夫です。また連絡します」

思いの外あっさりとした文面が返ってきた。ぱっと見普通の人だ。しかし既読のスピードは尋常じゃなかった。ずっとスマホを手に待っていたのだろうか。前のメッセージから一週間も経っているのに。こわい。

やはり変態だ。こわい。めちゃくちゃメッセージとか送られてきたらどうしよう……性的なメッセージや写真が来たら……速攻ブロックしなくては。

と、びくびくしていたのだが、意外なことに、変態からのメッセージは普通だった。一日に一回ほど、普通の内容のメッセージが届く。

「今日は暑いね。魔界はどうですか?」
「帰り道に猫をみつけたんだけど、リクくんに似ていたよ」
「仕事が終わりました。疲れたよ。リクくんの一日はどうでしたか?」

など。ま、まともだ……
しかし、こちらからの返信につく既読のスピードは相変わらず異常に速かった。基本的に僕はスマホを持たないので、メッセージも三日に一回にチェックする程度なんだけど、そこで適当に返事をすると、秒速で返事が来る。

返事の内容はまともだ。ただし既読がめちゃめちゃ速い。ギャップが気持ち悪かった。



変態とメッセージのやり取りをするようになって1ヶ月。カイと会うことになった。カイは天界に生まれて、今は天使をやってるけど、僕と生まれた時期が似ていて、仲良しなのだ。

「カイ、久しぶり」
「リクも久しぶり。元気?大丈夫?」

久しぶりに会ったカイは元気そうだった。仕事もうまくいっているみたいで(なんか特殊な事情があるらしいけど)、つやつやしていた。

対して僕は。カイに「大丈夫?」と聞かれるくらい、見た目が悪かったのであろう。正直なところ、めちゃくちゃ疲れていた。

「あの変態、最近どうなの」
「大分ましになってきて、恋活も普通にやってるみたいだけど。」

ましになったという変態。確かにメッセージの内容は普通になった。初対面のときのように、セクシャルに撫で回したいとか言うのはダメだと学んだらしい。それはいい。ただ……

「既読のスピードが速すぎてこわい」
「ああ……」
「なんか監視されてるみたいで疲れる。返事するのも怖くなっちゃった」

ほんとうにまじで既読のスピードが速い。何回おんなじこと言うんだと思われるかもしれないが、本当に速いのである。そしてそれは、僕の負担になっていた。

「なんでこんなことなったんだろう……」
最近はもう、人間界から距離を取っている。前は人間を装ってTwitterとかInstagramとかやってたけど、いまはもうやってない。とにかく人間に接するのが怖かった。

「初めて人間界に行ったときは楽しかったのにね」

そう、僕は一度、カイと一緒に人間界に遊びにいったことがあるのだ。そのときはとても楽しかった。いろんなものが新鮮で、クレープなるものを食べたり、公園で遊んだり。もう30年ほどまえかな?あ、丁度100歳のお祝いで行った気がする。

「あのときは楽しかったのになあ」

はあ、とため息をつく。クレープ、もう一回食べてみたいな。公園のブランコも楽しかった。……でも今では、公園にはトラウマができてしまった。公園には変態がいる。

「カイ、また一緒に人間界に遊びにいこうよ。クレープ食べたい。一人じゃこわいから、一緒に行ってくれる?」
「いいよ。クレープ、僕も食べたかったんだ」

そうして、カイと人間界で遊ぶ約束をした。最近沈んでいた気持ちがちょっと上がる。クレープ!ふふふ。クレープはとても美味しい食べ物なのだ。

クレープ食べたら、久しぶりにInstagramにアップしようかな。Twitterで自慢するのもいいかもしれない。
わくわくしてきた。

「カイのお陰で元気が出たよ。ありがとう」
「僕も久しぶりにあえて嬉しかったよ。こんどの約束も楽しみにしてる」

そうやって笑ってカイと別れた。


その日の夜。相変わらず一日に一回変態からメッセージが届く。今日の内容は、
「一度会って、人間界で遊ばないか?」
だった。なんというタイミング。まじで監視されてるんじゃなかろうか。

気持ち悪かったので、見なかったことにした。カイと遊びにいくことも、絶対内緒にしなきゃ。カイに、変態には遊びにいくこと内緒にしてねってメッセージを送る。

こわい。
絶対に会わないようにせねば。
今度遊びにいく場所は都会で、変態にであった場所とは遠く離れているのだけど、恐怖感はぬぐえなかった。遊ぶ日が楽しみで、だけどこわい。

微妙な気持ちで日々を過ごすのであった。