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オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(3)

BL「運命の子拾いました」(3)



あれから数日。変態にであってしまったショックでしばらく引きこもった。本当に怖かった。もう人間界にはいかない!!

と、思ったんだけど、非常事態が発生した。財布がない。どこかで落としてしまったようだ。

どこで落としたんだろう。よーくよく考えてみる。ここ数日は家に引きこもってた。その前は人間界に行って……人間界に……

どう考えても人間界で落とした。
そういえば、木に引っ掛かっていたらしい僕。あれ、なんでだったか思い出した。財布を途中で落としたのだ。公園で落とした。それを取りに行こうとぱたぱた飛んでたら、途中でカラスと接触事故を起こして……
そこで気を失って木に引っ掛かっていたのだろう。なるほど思い出した。

思い出したはいいけれども、そうなるともう一度人間界に行かなきゃならない。財布には身分証とか保険証とかも入っている。無くしたらこまるのだ。警察とかに届いてるといいけど。

……人間界、いきたくないなあ。
でも仕方ないので、気合いをいれて人間界に向かったのであった。





財布を落とした公園の最寄りの交番には財布は届いていなかった。ということは、まだ公園にあるか、誰かに持っていかれたかの2択である。でも、僕の財布は魔界のお金しか入ってないし、誰も持っていってないだろうな、地道に探すか……としょんぼりしながら公園に向かった、のだがすぐさま帰りたくなった。あのとき出会った人間が、公園のベンチに座っている。

出会いたくない。変態からは逃げるに限る。身分証とかもういい。全部再発行してもらえばいいのだ。

帰る。帰る!!

とわあわあわしていたら、ぬっと背後に誰かが迫ってくる気配が。
嫌な予感……振り返ってみると、はい出た!変態だ!!!


「やあ、久しぶりだね、リクくん」

名前を把握されている。ということは……

「これ、君の財布だろう?」

僕の財布!中身勝手に見やがったなこの変態!

「僕のです!返してください」
速やかに!速やかに返してくれ僕はもう帰りたい!


「返してもいいよ。でも交換条件として、連絡先だけ教えてほしいなあ」
「くっ卑怯な!なんて卑怯な変態なんだ!」
「変態じゃないよ、君に一目惚れしてしまったんだ。是非仲を深めたいのだけど」

一目惚れ。なんか誠実そうな告白だけど、僕は覚えている。

「仲を深めるとか言って、下心あるじゃないですか。手を出すとか出さないとか、気持ちわるいんですけど。僕まだ未成年ですからね犯罪者め」

いくら僕が人間より歳を取っているとはいえ、僕たちの基準では僕は未成年だ。

「犯罪者と呼ばれるのは悲しいな。僕は本当に一目惚れをしてしまったんだ。手を出すようなことはしないよ。ただ、連絡をとったり、そういうことがしてみたい」

なんせ人生初の恋なので。

意外に思った。こんなに顔が整っているのだから、恋人もたくさんいただろうの思っていたのに、初恋。
聞くところによると35歳らしい。それが、僕に初恋。

「人間の顔に全く興味がなくてね。僕の好みはどうも、君みたいな悪魔のようだ。」


……変わっている。
人間界基準ではモテるのだから、人間と付き合えばいいのに、よりにもよって僕。しかもかなり粘着質。きも。

結論、きもい。


「僕は魔界の中では非常に平凡な顔なので。別の悪魔をお探しください」
「でも、出会いがないよ。そんな中で君とであったのは奇跡だと思う」
「完全なる偶然だと思いますけどね僕は」


粘着質だ。さっさとあきらめてほしい。


「とにか僕にはあなたに付き合う気はさらさらないので。スマホ持ってるなら魔族用の恋人マッチングアプリ使えばいいんじゃないですか」

魔界では最近恋活がはやっている。魔王さまとそのお連れ合い様が魔界に持ち込んだ人間界の文化が、面白いものとして広まったのだ。ちなみにスマホも人間界からの輸入品。大変便利で助かっている。

「そんなものあるか」
「ありますよ。Apple storeなりGoogle playなりでインストールしてくださいよ」
「なるほどありがとう。じゃあ連絡先を教えてくれるか」
「教えねーよ!ほんと粘着質だな!」

もういい!僕は変態からは財布を無理矢理引ったくって空中に飛び出した……

「ぎゃー!」

また尻尾を捕まれた!!

「ひどいよう……いたい……」

べそべそなく僕に、またティッシュをくれる変態。そんな気遣いよりまずもってその変態性をどうにかしろよハゲ。

「連絡先、教えてほしいんだけど」

尻尾を握られながら言われる。怖い。

「離してください」
「離したら、もう君とは会えないだろう」
「当たり前だろ誰がわざわざ変態に会うものか」

変態は困った顔をした。

「変態と言うのはひどいな。僕は君と仲良くなりたいだけなんだ」
「手段がきもいんだよ!」

この人間、自分が何やってるか全然理解できてない!35年間恋愛をしてこなかった人間の、関係性の構築の間違いかたは最悪だった。

「あなた、もうほんとどうしようもないですね。誰かと付き合う前にその変態性をどうにかした方がいいですよ」

ほんとにいつか犯罪者になりかねない。ということで、知り合いの天使を紹介しておいた。愛とは何か、恋とは何かを叩き込んでもらおう。本当は魔王様のお連れ合い様を紹介して、鉄拳教育を施して頂きたかったが、いち一般魔族の僕がそんな大それたことは出来ないので、仕方なく天使に一度預けることにした。相手の天使の方も、了承してくれたので、天使の連絡先を教える。
……ということで、僕がすべきことは終わった。今度こそ帰る!!

もう尻尾を掴まれることのないよう、服のなかに尻尾を隠して思い切り空へ飛び立った。財布もちゃんと持っている。


変態め、今度こそおさらばだ!天使からの指導を受けてせいぜいましな人間になることだな!!