9×9

オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(2)

「運命の子拾いました」(2)



ふと目を覚ました。一番に感じたのは肘や膝のひりひりとした痛み。そして二番目に気づいたのは、僕のことを超至近距離でみつめるおじさんの存在だった。

「うわー!」
「ああ、起きたね。どこか具合がわるいところはないか」

言っていることはまともでいい人っぽいのだけど、とにかく距離が近くて怖い。端正な顔立ちだが、真顔でまばたきもせずこちらを凝視してくる。とても怖い。

「……どこも悪くないので、は、離れていただいて大丈夫です」
「そうか」

そうやってやっと離れてくれたが、こちらをめちゃくちゃ見てくるのは変わらない。本当に怖い。この人誰なんだろう。ここはどこ。

「きみ、気を失って木に引っ掛かっていたよ。擦り傷もあったから、ひとまず保護したのだが」
「あ、ありがとうございます……」

いい人っぽい。だけどやっぱりこちらを凝視してきて怖い。

実は、人間と接するのはほぼ初めてだった。普段僕は魔界に住んでいるのだが、昨日はなんとなく人間界に出て、誰かをたぶらかしたい気持ちになったので、気軽な気持ちで人間界にやって来たのだ……えーっと、なんで木に引っ掛かっていたのだろう。記憶がない。
まあきっかけはさておき、大事なのは今ここからどうやって逃げ出すかだ。魔王様みたいなすごい方だと、一瞬で姿を消せるのだけど、一般魔族の僕は、地道にぱたぱたと飛んで帰らなくちゃならない。

まずこの部屋から出たい。
……目の前のこの人から逃げ出したい。

「看病していただいてて、ありがとうございました。それではお暇させていただきます」
「ちょっと待ってくれ」
「うわー!」

いきなり尻尾をぎゅっと掴まれた。いたい!そこはデリケートな部分なんだぞ!

いたい……とぽそぽそ泣く僕に、「すまない」といいつつティッシュを渡してくれる人間。……なんなんだこの人。

「なんなんですか……僕もう帰りたいんですけど」

尻尾もいたいし。

「帰るって、どこに帰るんだ」
魔界ですけど」
「……魔界にはスマホはあるか」
「あります」
「きみは持ってる?連絡先を交換しよう」

スマホを手に、真顔で迫ってくる人間。こんな怖い人に連絡先を教えなければならない意味がわからない!

「なんでですか。僕、あなたが怖いんですけど。」

さっきからずっと見てくるし、ずっと真顔だし、尻尾も掴まれた。怖いところしかない。

「ああ、怖がらせていたのか、申し訳ない。子供だものな、もう少し柔和にすべきだった」
「こどもじゃないですよ!僕もう128歳なんですから!」

こどもだなんて失礼な話だ。僕の種族は130歳で成人だ。あと2年で僕も大人!

「ふむ、子供ではないのか。では手を出しても問題ない……」
「問題だらけですよ!?」

いきなりなんだこの人!怖い!手を出すってなんなんだよ!

「あなたなんなんですか!怖いです!手を出すって何するつもりですか!」
「セクシャルに撫でくりまわすなど」
「こわい!!!!」

とうとう泣けてきてしまった。子供ではないけどまだ成人してないんだぞ!この犯罪者!合意もないんだからな!!

わーんと泣き出した僕に、またティッシュをくれる人間。気が利くんだかなんだか分からない。とにかく気持ち悪くて怖かった。

「僕帰りますから!変態!!」
「あ、連絡先だけ」
「誰が変態に教えるとでも!ばーかしね!」

相手の制止をかわして窓から外に出る。
もう人間界になんか来ないからな!あと変態はみんなしね!!

ばーかばーか!!こわかったよー!!


うえーんと泣きながら、僕は一生懸命羽をぱたぱたさせて魔界に帰ったのであった。