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オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(1)

BL「運命の子拾いました」


35歳。今まで一度も恋愛をしてこなかった。そんな自分が初めて恋した子、それは。

道端に落ちていたちっさい悪魔だった。





昔から恋心というものがなかった。誰かを見てドキドキしたり、特別な存在になりたいと思ったりしたことがない。特別どころか、みな平凡に見えた。友人や知人として付き合うのであればなんともないのだが、恋人、となると全く興味が湧かない。
特別な存在とは。告白された経験も多いが、全く心に響かない。ああこの人は何て平凡なんだろう。そんな失礼なことを思ってしまう。知り合いによれば、自分は「見た目がとてもいい」「モテる」人間らしいが、自分で自分を見ても平凡にしか見えないし、そんな平凡な自分に平凡な人間にまとわりついているという状況に嫌気がさした時期もあった。

そんな自分が、今、ときめいている。
ああ、これが恋か。これが一目惚れと言うものか。
初めて知った感覚。


会社からの帰路、ふと寄った公園に落ちていた、ちいさな男の子。よくみると、ちいさな角と、羽、先の尖った尻尾がついている。これは、いわゆる悪魔というものではないか。
まあ肩書きはどうでもいい。ときめく。その角に、その羽に、その尻尾に。体つき、顔立ち、全てが美しく、好ましく感じた。

これがタイプというやつか。

理解した。自分のタイプは悪魔だった。今まで恋をしたことがなかったのは、人間が守備範囲外だったからだ。自分のタイプはこのような悪魔。かわいらしい。どこから見てもかわいらしい。


さて、この悪魔、気を失って木に引っ掛かっていた。保護者がいるわけでもなさそうだ。

持って帰ろう。

こんなかわいい子は保護せねばならない。目を覚ます様子もないし、看病せねばならないだろう。あと下心もある。持ち帰る以外の選択肢はない。


抱いてみると、腕にすっぽり収まる程度の大きさだった。小さい。かわいい。角が刺さってちょっと痛い。かわいい。

とにかくかわいい。かわいすぎていつまでも見ていられる。かわいい。


しかしかわいいかわいいとばかり言っていても仕方がないので、ひとまず家に連れて帰り、看病せねばならない。
うっかりかわいさに目を奪われて前方不注意になりながらもようやく帰宅し、小さな悪魔をベッドに寝かせた。

見る限り、擦り傷が少しある程度で、他は問題無さそうだった。意識がないというよりは、爆睡しているといった感じ。一応熱も計ってみたが、悪魔の平均体温が分からないのであまり役には立たなかった。苦しそうにしている訳でもないし、一晩様子を見ることにしよう。

そう思って、その夜は悪魔を見守り続けたのであった。