9×9

オリジナルBL・百合小置き場

BL「魔王様の恋活」(3)完結

魔王様の決断


王族の三男坊、アレクと付き合いはじめて半年。誠司への未練は残るが、アレクとの交際も穏やかで思いやりに満ちた、非常によいものであった。

ある日。
「マオ、わたしと同棲しないか」
そう提案された。俺は魔界を統治しないといけないので、未だ拠点は魔界だ。アレクと会うときのみ、人間界に来ている。なので、アレクと同棲することはできない。……基本的には。

そう言って、そのときの提案はお断りした。アレクは残念そうな顔をしていたが、俺の立場に理解を示してくれていたので、同棲しないという俺の意見を尊重してくれた。

そしてそれからまた半年。アレクとの交際は順調だ。そして。
「結婚してほしい」
プロポーズをうけてしまった。

お互い、いい年なので(俺は魔王なのであまり年齢を気にすることはないのだが)、そろそろ結婚を視野にいれてほしいとのことだった。
ううむ。確かに、人間にとっては年齢や年月の流れというものが大切であることは理解している。しかし、結婚となると、未だに誠司のことを思い出してしまう。魔王として存在してきて初めて出来た配偶者。……別れてしまったが。しかし別れてからはや二年。次を考えてもいいのではないか。

「プロポーズを受けるかどうかはまだ返事は求めないよ。でも一度、今付き合っている人として両親に紹介をしてもいいだろうか」
考え込む俺を見かねて、猶予をつけてくれたアレク。とても優しい相手だ。大人で、穏やかで、お手本にしたいくらい、いいやつ。その優しさに、俺も応えるべきだろう。恋人として、愛し愛される関係が理想なのだから。いつも配慮してもらうばかりでは申し訳がない。

ということで、俺はアレクの両親に会うことにしたのだった。




結果からいうと、俺はアレクの両親には受け入れてもらえなかった。

まず見た目からして俺は魔王っぽいので、初対面から嫌そうな顔をされ、自己紹介で「はじめまして、魔王です」といった瞬間「ナシ!!!」と言われた。流石につらかった……。しかしどうも、俺自身がダメというわけではなさそうだった。

「ナシだ!アレク、三男坊だからと言って自由にさせてきたが、なぜいつもアウトローな存在ばかりつれてくるんだ!」
「過去の交際遍歴、魔王様に伝えたことあるの?」
「……ない」
「じゃあ今言ってごらんなさい!」
「……盗賊の団長、詐欺師、侵略国の軍隊長、悪魔」
「ほらアウトロー!!魔王様、この子はとにかくアウトローが好きなんです。結婚してはうまくいかずに離婚ばかり。流石に体面が悪いと思っていたところに魔王となると、なかなか親としても、一国の王としても認められないのです」
「『マオさん』がいい人だということは、アレクから聞いていました。しかし魔王いう肩書きの方となると、ちょっと……」

……アレクにはこんな裏事情があったのか。そりゃアウトローに対しても心が広いわけだ。アウトロー慣れしている……


結構衝撃的な発言を聞き、アレクの両親から身を引くようお願いされたあと。アレクの部屋に移動して、話し合った。
「……僕のこと、嫌いになった?」
「いや、嫌いにはならないが」
「じゃあ、駆け落ちしないか。僕はもう、王族だというだけで、世間でアウトローと呼ばれてしまう人たちと付き合えないのは嫌だ。魔界に連れていってくれ」


……すぐに返事ができなかった俺に、アレクは察したらしい。
「ごめん、こんなことになって。別れよう」
「……申し訳ない」
こちらこそ、来てもらったのにごめん。でも、マオのことはアウトローだから好きになった訳じゃないんだ。本当にいい人だったから、好きになったんだ。これだけは伝えさせてほしい。」
「ありがとう」
こちらこそ、ありがとう」


そうして、俺はアレクと別れたのであった。





「というわけで、またフリーに戻ってしまった」
「落ち込むなよ、他にも王族はいるって」
「いや別に王族縛りとかないし」
「あっそう?」

定例となった、誠司との恋活報告会。
アレクと別れたことを誠司に伝えた。

「てかなんで駆け落ちしなかったわけ?いい感じだったじゃん」
「実は人間を魔界につれていくのはかなり面倒な手続きがあるんだわ……」
「手続きとかあんの」
「ある。まず戸籍を作る。それには普通は半年かかる。戸籍ができたら、魔界の住人にお触れを出して襲わないようきっちり伝えなければならない。あと善の神にも許可の申請をしてOKをもらわなければならないな。それから、人間は魔界の障気に耐えられないから、常に俺が結界を作っておかなければならないし、そこまでの準備ができ次第人間にパスポートを取ってもらってこっちで住民票の申請をして、やっとこっちへ渡界できる。」
「めんどくさ!!」
「駆け落ちっつっても俺との場合渡界だからな、なかなかできないんだよ」
「うわそりゃ無理だわ」
「なかなか難しいんだよ」

そう、難しいのだ。でも俺は誠司を拐った。それは……

「でもお前、俺のこと拐ったじゃん。戸籍の話とか聞いたことないんですけど」
「あのときは……気合いでどうにかした」
「気合いで」
「気合いで」
「気合いでできるならアレクのことも連れてきてやったらよかったじゃねーか」
「……アレクのときは、その気合いが出なかったんだよ。お前のときはどうしても連れていきたかったから死に物狂いで書類作ったし、色んなところに頼み倒して無理を利かせてもらったんだよ。パスポートも人間界と行き来できるよう特別仕様にしたりな」
「……そんなことがあったとは」
「一目惚れってのはすげーなとその時は思ったよ」
「お前そんなに俺のこと好きだったのかよ」
「好きだった……今も、好きだ」
「おお唐突な告白」

びっくりしたような誠司。

「なんやかんやでお前から好きだって言われるの二回目だな。新鮮だわ」
「一回目は殴られながらだったからな……あれは忘れてもらって、実質今のが正式なものとして受け取ってくれ。流石に情けない」
「じゃあまあこれが初告白ってことで。」

面白そうな顔をしている誠司。


「まじでお前大人になったよな。今年いくつだっけ?」
「1576歳」
「おーもうあのときから2年も経ったのか。2年でよくここまで成長したな」
「お前とご両親のお陰だよ」
「ご両親!ついこの前までババアとか呼んでたのに!」

あっはっはと大笑いする誠司。いやもう2年前までの未熟な俺のことは忘れてくれ……我ながら恥ずかしい……

「ところで俺の恋活報告なんだけどさあ、俺も破局したんだわ」
「お前、去年結婚したんじゃなかったのか」

そう、誠司は去年、付き合っていた大学生と結婚した。結婚式には俺も呼ばれたが、つらすぎたので出席はしていなかった。ただ、誠司から聞くところによると、とてもいい式になったんだとか。

「おーしたんだけど、相手が浮気してさあ。親と俺でぼこぼこにして離婚した」

なんと。誠司はフリーになっていた。

「んで、まあいまバツ2な訳だけど」
「結婚してください」

すぐさまプロポーズした。もう食いぎみでプロポーズしてしまった。バツ2とかどうでもいいし(ていうかそのうちの一回は俺との離婚だ)、この機を逃すなんて勿体ないことはしない。

「好きなんだ。色んな人間とであって、付き合ってみたりもしたが、やっぱりお前のことが忘れられなかった。こんな状態で他の人間と付き合うのも申し訳ないと思って後悔したくらいだ。それくらいお前のことが、ずっと好きだ。拐いたいくらい好きだったんだ」

もう言葉は惜しまない。好きな気持ちは口に出さないと伝わらない。誠実さ、相手を大切にする気持ち。両方があって、やっとお付き合いができるのだと、誠司たちから学んだのだ。


「おお、そんなに情熱的な告白されるとは思ってなかったわ。」

誠司はまた大笑いした。そんなに笑わなくてもいいだろ……なんか恥ずかしくなってきた。

そんな俺を愉快そうに見ながら、誠司は
「俺も、今のお前とならやり直せるような気がするよ。」
と言った。

今度は愛し愛される関係になれるんじゃね。


そう言ってまた笑った誠司に、俺はもう、なんとも言えぬ幸福感を味わったのであった。
今度こそは。



その後、誠司のご両親に再び挨拶に行き、一悶着あったものの、結婚の許可を得た。誠司の魔界での戸籍は残してあったままだったので、その日の内に引っ越しをし、同棲することになった。

誠司のいる魔界。誠司とともに送る日々。愛し、愛される生活。

1576歳にしてやっと手に入れた幸せ。
大変なことも沢山あった。悲しいことも沢山会った。「幸せは簡単に手に入らない」誠司の言うとおりだ。そして「愛し愛される結婚生活がいい」これも、誠司の言うとおりだった。


大切な相手。もう離さない。
愛し愛される、ただ一人の相手と、共に暮らせる幸せを、今度こそ壊しはしない。

そう心に決めたのだから。