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オリジナルBL・百合小置き場

BL「カウンター越しの恋」(4)

「カウンター越しの恋」(4)

彼とであってから数ヶ月、朝のシフトに入るようになって数ヶ月。彼を避けるように昼のシフトで働くようになって数ヶ月。初めて彼とであってから、もう、一年程が過ぎた。一年。彼を想うようになって、一年。彼を諦められなくて、醜く悶えながら過ごす日々も、もうすぐ一年になる。短いようで長い時間。無駄だと分かっているのに。

バイトも、やめてしまおうか。採用面接のハードルが高いことで有名なこの店。採用されたときは、とても誇らしかったのに、今ではあの頃の高揚感も、やる気もない。ただ淡々と、ロボットのように働くことしかできなくなった僕。辞めてしまえばいいのだ。


他にもバイトなんていくらでもある。さて、いつ店長に辞めたいということを伝えようか。そうやってタイミングを見計らっていたある日、突然店長に呼ばれた。辞めたいと思っているのがばれた?いや、勤務態度が悪いと怒られるのだろうか。すこしどきどきしていた僕に伝えられたのは意外な言葉だった。

「朝のシフトに戻ってくれないか」

聞くところによると、朝のシフトに入っていたあの女の子が、バイトを辞めてしまうらしい。以前、朝のバイトにいそしんでいたことを知っている店長は、空いた分を補って欲しいというのだ。

時間的に不可能ではない。またあの頃のように、すこし早起きすればいいだけだ。しかし問題は、朝のシフトに入れば、また彼と顔を合わせるかもしれないということだった。彼のことは忘れたい。彼のことで一喜一憂したくない。また、性懲りもなく彼に惹かれてしまう自分に苦しみたくない。

しかしそんな本音を言えるわけもない。一人やめたタイミングで、自分も辞めたいということも言えず、僕はまた朝のシフトに入ることとなったのだった。