9×9

オリジナルBL・百合小置き場

BL「運命の子拾いました」(2)

「運命の子拾いました」(2)



ふと目を覚ました。一番に感じたのは肘や膝のひりひりとした痛み。そして二番目に気づいたのは、僕のことを超至近距離でみつめるおじさんの存在だった。

「うわー!」
「ああ、起きたね。どこか具合がわるいところはないか」

言っていることはまともでいい人っぽいのだけど、とにかく距離が近くて怖い。端正な顔立ちだが、真顔でまばたきもせずこちらを凝視してくる。とても怖い。

「……どこも悪くないので、は、離れていただいて大丈夫です」
「そうか」

そうやってやっと離れてくれたが、こちらをめちゃくちゃ見てくるのは変わらない。本当に怖い。この人誰なんだろう。ここはどこ。

「きみ、気を失って木に引っ掛かっていたよ。擦り傷もあったから、ひとまず保護したのだが」
「あ、ありがとうございます……」

いい人っぽい。だけどやっぱりこちらを凝視してきて怖い。

実は、人間と接するのはほぼ初めてだった。普段僕は魔界に住んでいるのだが、昨日はなんとなく人間界に出て、誰かをたぶらかしたい気持ちになったので、気軽な気持ちで人間界にやって来たのだ……えーっと、なんで木に引っ掛かっていたのだろう。記憶がない。
まあきっかけはさておき、大事なのは今ここからどうやって逃げ出すかだ。魔王様みたいなすごい方だと、一瞬で姿を消せるのだけど、一般魔族の僕は、地道にぱたぱたと飛んで帰らなくちゃならない。

まずこの部屋から出たい。
……目の前のこの人から逃げ出したい。

「看病していただいてて、ありがとうございました。それではお暇させていただきます」
「ちょっと待ってくれ」
「うわー!」

いきなり尻尾をぎゅっと掴まれた。いたい!そこはデリケートな部分なんだぞ!

いたい……とぽそぽそ泣く僕に、「すまない」といいつつティッシュを渡してくれる人間。……なんなんだこの人。

「なんなんですか……僕もう帰りたいんですけど」

尻尾もいたいし。

「帰るって、どこに帰るんだ」
魔界ですけど」
「……魔界にはスマホはあるか」
「あります」
「きみは持ってる?連絡先を交換しよう」

スマホを手に、真顔で迫ってくる人間。こんな怖い人に連絡先を教えなければならない意味がわからない!

「なんでですか。僕、あなたが怖いんですけど。」

さっきからずっと見てくるし、ずっと真顔だし、尻尾も掴まれた。怖いところしかない。

「ああ、怖がらせていたのか、申し訳ない。子供だものな、もう少し柔和にすべきだった」
「こどもじゃないですよ!僕もう128歳なんですから!」

こどもだなんて失礼な話だ。僕の種族は130歳で成人だ。あと2年で僕も大人!

「ふむ、子供ではないのか。では手を出しても問題ない……」
「問題だらけですよ!?」

いきなりなんだこの人!怖い!手を出すってなんなんだよ!

「あなたなんなんですか!怖いです!手を出すって何するつもりですか!」
「セクシャルに撫でくりまわすなど」
「こわい!!!!」

とうとう泣けてきてしまった。子供ではないけどまだ成人してないんだぞ!この犯罪者!合意もないんだからな!!

わーんと泣き出した僕に、またティッシュをくれる人間。気が利くんだかなんだか分からない。とにかく気持ち悪くて怖かった。

「僕帰りますから!変態!!」
「あ、連絡先だけ」
「誰が変態に教えるとでも!ばーかしね!」

相手の制止をかわして窓から外に出る。
もう人間界になんか来ないからな!あと変態はみんなしね!!

ばーかばーか!!こわかったよー!!


うえーんと泣きながら、僕は一生懸命羽をぱたぱたさせて魔界に帰ったのであった。

BL「運命の子拾いました」(1)

BL「運命の子拾いました」


35歳。今まで一度も恋愛をしてこなかった。そんな自分が初めて恋した子、それは。

道端に落ちていたちっさい悪魔だった。





昔から恋心というものがなかった。誰かを見てドキドキしたり、特別な存在になりたいと思ったりしたことがない。特別どころか、みな平凡に見えた。友人や知人として付き合うのであればなんともないのだが、恋人、となると全く興味が湧かない。
特別な存在とは。告白された経験も多いが、全く心に響かない。ああこの人は何て平凡なんだろう。そんな失礼なことを思ってしまう。知り合いによれば、自分は「見た目がとてもいい」「モテる」人間らしいが、自分で自分を見ても平凡にしか見えないし、そんな平凡な自分に平凡な人間にまとわりついているという状況に嫌気がさした時期もあった。

そんな自分が、今、ときめいている。
ああ、これが恋か。これが一目惚れと言うものか。
初めて知った感覚。


会社からの帰路、ふと寄った公園に落ちていた、ちいさな男の子。よくみると、ちいさな角と、羽、先の尖った尻尾がついている。これは、いわゆる悪魔というものではないか。
まあ肩書きはどうでもいい。ときめく。その角に、その羽に、その尻尾に。体つき、顔立ち、全てが美しく、好ましく感じた。

これがタイプというやつか。

理解した。自分のタイプは悪魔だった。今まで恋をしたことがなかったのは、人間が守備範囲外だったからだ。自分のタイプはこのような悪魔。かわいらしい。どこから見てもかわいらしい。


さて、この悪魔、気を失って木に引っ掛かっていた。保護者がいるわけでもなさそうだ。

持って帰ろう。

こんなかわいい子は保護せねばならない。目を覚ます様子もないし、看病せねばならないだろう。あと下心もある。持ち帰る以外の選択肢はない。


抱いてみると、腕にすっぽり収まる程度の大きさだった。小さい。かわいい。角が刺さってちょっと痛い。かわいい。

とにかくかわいい。かわいすぎていつまでも見ていられる。かわいい。


しかしかわいいかわいいとばかり言っていても仕方がないので、ひとまず家に連れて帰り、看病せねばならない。
うっかりかわいさに目を奪われて前方不注意になりながらもようやく帰宅し、小さな悪魔をベッドに寝かせた。

見る限り、擦り傷が少しある程度で、他は問題無さそうだった。意識がないというよりは、爆睡しているといった感じ。一応熱も計ってみたが、悪魔の平均体温が分からないのであまり役には立たなかった。苦しそうにしている訳でもないし、一晩様子を見ることにしよう。

そう思って、その夜は悪魔を見守り続けたのであった。

BL「待っててください」おまけ

BL「待っててください」おまけ

1
「先輩はもう喧嘩はしないんですね」
「しないよ」
「先日お父様とお母様がバトルを繰り広げられていたのですが、現役かと思うほどの勢いでした」
「とーさんかーさんは体動かすの好きだからね。俺はどちらかというと本読んでる方が好きだ」
「まともな人に見えますけど、喧嘩を『体を動かす』と表現した先輩もなかなか不良感ありますね」



2
「あの、誠司さんから紹介していただいた、ハッサンと申します。」
「はじめまして、僕はカミールです。おうちの方、大変みたいですね。父に連絡してみたのですが、どうにか取り計らいができそうです」
「いきなり、他人でありながら図々しいお願いを、本当に申し訳ありません」
「いえ、こちらとしましても、自社の利益になりそうだという部分がありますから。気になさらないでください」

「カミールがまともに石油王の息子やってるの久しぶりに見たわ。誠司のおかげだ」
「そんな感謝のされ方するとは思わなかったわ」



3
「先輩、元ヤンの先輩は最強BL攻めランキングの8位だそうです」
「微妙だなあ」
「でも僕のなかでは先輩が1位です」
「それはとっても嬉しいな」

BL「待っててください」

「待っててください」



ある日突然、うちの会社が倒産した。中東で石油を扱っていた父は、いわゆる石油王というやつである。ここのところ、石油価格も上昇しており、利益も十分得られていた。息子である僕は、将来会社を継ぐべく、見解を広めるため、色々な国の大学に留学しているところであった。アメリカ、イギリス、インド、中国、イタリア、フランス……現在留学しているのは日本だ。そして、倒産の知らせを聞いたのも日本であった。


とにかく困った。まず収入がない。仕送りに頼って生活していたため、仕送りがストップしたらもう何もできない。どこも短期留学だったのでバイトもなかなかできなかったし、貯金していた口座は凍結されていた。お金がない。そうすると、次は食べるものがない、住む場所がない。
帰るための費用もないし、帰ったところで倒産の後処理をする親にとって負担になってしまうだろう。どうにかして自立せねば。


倒産の知らせから三日。なんとかしようと色々頑張っているのだが、もうとにかく日本のビザの制度や外国人に対する日本人の態度への不満が溜まってきている。もうほんと帰りたい。もうほんと帰りたい!!

でも帰れない!!


お金もない、時間もない、頼れる人もいない、帰れない。言語も勉強している途中で、難しいことは理解できない。自分を保護してくれる制度も見つけられない。
ないない尽くしで、とうとう涙が出てきてしまった。もう無理かもしれない。大学の帰り道、べそべそと泣きながら歩いていると、知り合いに遭遇した。
サークルの先輩だ。


「おう、ハッサン。どうしたそんなに泣いて」
「実は……」

先輩は僕の所属するサークルのOBである。僕は、外国人と交流するサークルに所属していて、そこで先輩は僕の母国の言葉を勉強していたらしい。その国出身の留学生である僕に、語学を教えてほしいと声をかけてくれた人で、見知らぬ場所で心細かった僕にとってとても頼れる人だった。先輩はサークルに来ると必ず僕としゃべってくれて、とても信頼している相手だ。
悲しみのあまり日本語もしゃべれず、母国語で泣き言を漏らす僕にも、いつものようにやさしくしてくれた。


「ひとまず俺んとこで過ごすか?学費は払ってあるんだろう?卒業したら働いて労働者用のビザを取得すればいい」


そう励ましてくれる先輩。本当にやさしくて、穏やかで、いつもお世話をみてくれる先輩。ぼろぼろ泣きながら、ありがとうございます、ありがとうございますと繰り返し、と先輩のあとをついていったのであった。



先輩の住む家に着いた。一軒家。家族と暮らしているらしい。

「お邪魔します……」
「いらっしゃい」

先にご家族に話を通しておいてくれたらしく、ご家族の方も温かく迎え入れてくれた。

「今日は先に来客があって……少し驚くかもしれないけど、大丈夫だから」

お母様に言われて、ちょっと不思議に思っ た。驚くような相手とは……


「おーっす兄ちゃんお帰り。お客さん?」
「お義兄さんお邪魔しています。……そちらのかたははじめましてですよね、魔王ともうします」
「あ、おれは誠司です」

魔王。魔王!?
驚いたどころの話ではなかった。魔王。確かに角が生えている。隣に座るのはどうみてもやんちゃしてますな不良男子……これは一体……

「せ、先輩」
「安心して大丈夫だ。ハッサンが心配することはない。」
「安心……魔王……不良……???」

混乱する僕を見て、先輩は「俺の部屋にいこう」と気を使ってくれた。魔王と同じ空間にいるのは結構しんどかったので、助かった。やはり先輩はやさしくて気の効く人だ。


……とほっとしたのも束の間。先輩の部屋もなかなかショッキングだった。

基本的にはきれいに整った、さわやかな雰囲気の部屋だった。社会人らしく、スーツが掛けてあったり、専門書やパソコンが置いてあったり。しかし、部屋の片隅には謎の液体が着いた鉄パイプ、写真立てには短ランで鉄パイプをもったいかにも!な不良の写真が。

「……先輩は、不良なのですか」
「元ヤンってやつ」
「元ヤンの意味がわかりません」
「前は不良だったけど、今はそうじゃないってこと」

なるほど、無駄な日本語知識が増えた。

「弟さんは……」
「あいつは現役。父も引退したけど、最近はゴタゴタが多くて復帰してたみたいだな。」
「お父様も……」
「母さんもレディースの総長だったよ」

ちなみにレディースっていうのは女性の不良グループのこと、そのトップが総長。
やさしく説明してくれる先輩。しかし内容が内容である。また無駄な知識が増えた。

よく分からない日本の文化に触れ、ぶるぶるしている僕に、先輩はやさしく
「嫌だったか?怖い?」
と聞いてきた。

「……怖くはないです」
「それはよかった。最近はもう殴る蹴るしてないし、足を洗ったから安心してくれ」

にっこり笑う先輩。
足を洗うってなんだろう。……もう聞かないでおこう。

しかし……

「あの、魔王というのは……」
魔界のトップだな。あー、そんで弟の夫。俺の義理の弟ってことになるかな」
「そんなことがあり得るんですね!」


何てことだ。ここ数日で僕の世界はがらりと変わった。石油王の息子から、無一文の学生に。異界の存在との遭遇。知らなかった先輩の過去。不良という日本文化。


「僕、これからどうすれば……」
「結婚でもするか?」
「はい?!」

結婚して帰化すればいいじゃん。ビザの問題はこれで解決。

にこにこしながら言う先輩。

「だ、誰と結婚をすれば」
「そりゃ俺でしょ」

ですよね。

「ま、ビザが切れるまでに返事くれたらいいよ。それまでうちで面倒見るからさ」

だからといって、恩義で返事を強制してるわけじゃないから。

きっちりと言ってくれる先輩。やっぱり先輩は、僕の知ってる先輩と変わりはなかった。元ヤンだし、ヤンキー家族に魔王の義兄ではあるけれども、優しいところも、穏やかなところも、世話焼きなところも、みんな僕の知ってる、大好きな先輩だ。

「お返事はまだできませんが、よろしくお願いします」

ペコリと頭を下げた僕の頭を、先輩はよしよしとなでてくれた。





それから。
弟さんのつてで、石油王の息子さんを紹介してもらい、うちの事業の建て直しができるよう取り計らってもらった。それから僕は、先輩の家でお世話になりつつ、日給でお金をぽちぽちと稼いでは株につぎ込んで資産を増やしているところである。やはり自立はしたい。自立をして……


「先輩、あの、前にいってたあの話はまだ有効ですか」
「あの話?」
「あのー、あの、結婚の……」

ああ!と思い出してくれた先輩。

「僕、あの、自立したら……自立したら先輩と結婚したいです」
「養ってやるのに」
「先輩と対等な立場で結婚したいんです。甘えないで、ちゃんとした大人になって先輩と結婚したい。」
「そうか、ハッサンはえらいな」

よしよしと頭を撫でてくれる先輩。うれしい。

魔王の存在にもなれたし、不良の喧嘩にもなれた。日本社会にも馴染みつつある。
実家の事業も建て直しができそうだし、僕個人の資産も増えていっている。
ちょっとずつ変わる僕の世界。でも、そんななかで先輩は相変わらずやさしくて、穏やかで世話焼き。相変わらず、好きな相手だ。


「必ず自立します。だから待っててください」
「いつまでも待つよ」


やさしい先輩の言葉。
いつか、結婚するんだ。心に決めて、今日も日本で生きていく。

BL「王子さまはアウトローがお好き」(2)完結

王子さまはアウトローがお好き(2)



警察官である彼とのやりとりはうまく続いていた。趣味の話、仕事の話、その他色々、とても楽しく話ができる。あちらのほうもわたしに好感を持ってくれているようだったので、一度会ってみよう、ということになった。


彼に会う日。王族としてはラフな格好で彼を待つ。そして、とうとうやって来た彼……見覚えがあるような?そういえば彼の名前は……

「きみ、ルーカスじゃないか!」
「おう、久しぶりだな」
「アプリではルーだったはず……というかきみ、今警察官なの!?あのやんちゃ坊主が!?」

現れたのは、なんと昔の友人だった。名前はルーカス。幼い頃、年が近いということもあって一緒に遊んだ。城で働いていた女中さんの息子だったのだが、とにかくやんちゃで、城で働く人間にちょっかいを出したり、皿を割ってみたり、花壇の花を引っこ抜いたり。挙げ句のはてにはスリをして、たしか一度指導されていたはず。結局、やんちゃのしすぎで城から追い出された。そんな彼が警察官!驚けばいいのか笑えばいいのか。


「ルーカスは今いくつなんだっけ?」
「43歳」
「じゃあえっと……18歳から警察官やってるの?あんなにやんちゃしてたルーカスが?」
「おう。15の時に追い出されて、18で警官になったんだよ。憧れの職だったしな」

「憧れ?きみはてっきりやんちゃなアウトローだと……」
「確かにアウトローを目指していたよ」

アレクのことが好きだったから。


唐突な告白に驚いた。ルーカスが僕を好きだった?

「王子さまはアウトローがお好きって聞いたから、俺もアウトローになろうと思ったんだよ。でも全然振り向いてくれないし、恋人になったやつらよりも悪いことはしたくなかった」
「だから、アウトローになるのはやめて、警察官になってアレクの国を守ろうと思ったんだ。離ればなれになって、会うこともできなくなった俺が、唯一お前のために出来ることが、国を守ることだった」
「そう、だったのか」
「マッチングアプリで、アレクに似た人を見つけて浮かれたんだ。もしかしたらと思って。そしたら大当たりだ」

にっこりと笑うルーカス。幼いときも、笑顔の絶えない子どもだった。やんちゃだったがわたしにはやさしくて、花壇でむしった花で花束を作ってくれたこともある。一緒にいたずらをして、一緒に怒られたことも。

すっかり忘れていた友人。そんな彼が、わたしのことを思い続けてくれたなんて。15歳のときも、43歳になった今も。


「奇跡だと思った。ずっと好きだった相手に会えるなんて。だから今言わせてくれ。俺はアレクが好きだ。真剣に付き合ってほしい」

アウトローじゃないけど。
そう言って苦笑したルーカス。懐かしい、友人との出会い。そして向けられている好意。やさしくて、誠実な彼。

「……僕は別に、アウトローが好きな訳じゃないんだ。好きになった相手が悉くアウトローだっただけで」

まさかルーカスのいたずらが「アウトロー」を目指していたものだったなんて。微笑ましい。

ふふっと笑ってしまったわたしをみて、ルーカスは真剣な顔で、「好きなんだ。肩書き抜きにして、考えてほしい」と再び告白をしてくれた。


「ああ、わたしも付き合ってみたい。きみと。きみと過ごす時間は、きっと楽しくなるだろうと思うから」
「……ありがとう」

少し涙ぐむ彼。ずっとわたしのことを想い続けてくれていた。その気持ちに応えたいと思う。今度こそ、穏やかで優しさ溢れる恋がしたい。

「……ところでルーカスは、今は悪いことしてないよね?不倫とか勘弁なんだけど」
「大丈夫、そこはクリーンだ。仕事もうまくいっているし、法令遵守が警察官のモットーだしな」

よかった。

「じゃあまた、両親にも紹介させてほしい。アウトローじゃない恋人を連れていったときの両親の反応を想像するととても面白いよ」
「そんなにアウトローとばかり付き合ってたのかよ」
「まあ……前カレは魔王様だったから。アウトローの分野は極めたかんじがするよ」
「前カレが魔王……」
「まあ気にしないでくれ。今のわたしは、きみと付き合いたいと思っている。過去は過去として扱ってくれ」
「分かった。……じゃあ、今日からお付き合いさせていただけますか」
「勿論だよ、ルーカス」


というわけで、人生初のアウトローじゃない恋人ができた。それは昔の幼なじみ。いい感じだ。両親も安心するだろう。何より、わたしが幸せになるだろうという期待がある。

ルーカス。健気で優しい彼と、愛し愛される生活を遅れるようになればいいな。


そう思って、交際を決めたのであった。



その後、無事両親からもOKがでて、半年の交際ののち、結婚をした。お互い40代。遅めの結婚だが、気にしない(なんせ前カレは1574歳で結婚したわけだし、年齢などは些細な問題だ)。

そして今、とても幸せに暮らしている。
仕事にも、わたしに対しても熱心で誠実な彼。肩書きもばっちりだ。ありがたい。


そうして、アウトローを呼び込む恋はしなくなった。ルーカスと穏やかな関係であり、そしてその関係を持続させたいと願う。

幸せは、愛し愛され築くもの。魔王の言っていたことは本当だった。



わたしは今、とても幸せだ。

BL「王子さまはアウトローがお好き」(1)

王子さまはアウトローがお好き


わたしは某国の王の三人目の王子である。王族としてはごくごく普通に暮らしているのであるが、プライベートで、ひとつ困ってあることがある。

それは、好きになる相手がことごとくアウトローであるということだ。



初めての恋のお相手は、盗賊団の頭だった。盗賊が地方の村々を荒らし回っていたのを、退治するために出向いたところで出会った。当時17才だったわたしは、右も左も分からぬ場所へいきなり派遣され、とても困っていた。そんなわたしを助けてくれたのが、頭であった彼だった。彼は、わたしが討伐隊の一員であり、王族だと知っていながらも、困り果てたわたしを見かねて助けてくれた。わたしは彼が頭だとは知らぬまま、力強く優しい彼に恋をした。討伐を行う間、何度か逢瀬を重ねたが、ある日、とうとう彼が頭として捕まってしまった。わたしはそのとき初めて彼の身分を知り、混乱から抜け出せないまま、彼が処刑されるのを見たのだった。


二番目に好きになったのは詐欺師だった。初めての恋が、あまりにも悲惨であったため、恋に怯えていたわたしに優しく接してくれたのが詐欺師の彼だった。結局彼も詐欺師として捕まり、投獄されてしまった。

もう懲り懲りだと思いながらも、侵略してきた国の軍隊長や、人間をたぶらかそうと人間界へ降りてきた悪魔に恋してしまい、悲惨な最後を迎える、ということを繰り返してしまうわたし。
できるだけいい人を、今度こそ穏やかな恋を、と思っているのに、みんな、ふたを開けてみればアウトロー。こんなにいい人なのに、あんなに優しいのに、肩書きはアウトローだった。

自らもアウトローになって、好きな人に着いていきたいと考えていたときもあった。しかし、そこで邪魔をするのが「王族」という自分の肩書き。三男という微妙な地位とはいえ、王族は王族。それなりの態度が求められるし、アウトローとして家出、なんてこともできない。

「王族」の自分と「アウトロー」な彼ら。一時期は「禁断の恋」だとか民間で騒がれていたこともあったようだ。禁断の恋。禁断だなんて誰が決めたんだ。わたしはわたしが幸せになるために生きているだけなのに。


そうやって失恋や離婚を繰り返して、47歳。最近はアウトロー中のアウトローである魔王様との恋に破れた。知り合いのつてで知り合った相手で、メッセージのやりとりから始まった付き合い。名前は「マオ」。47歳の社長ということだったのだが、非常に優しくて、誠実だった。とても好ましく、是非会ってみたいと思って会ってみたら、「マオ」は1574歳の魔王様だった。このときばかりはまたか!と、自分でも思った。とうとうアウトローの最上級クラスをひいちゃったよ、わたしアウトローレーダーでも搭載してるの?と思い、落ち込んだのだが、肩書きはアウトローでも、魔王様は「マオ」の時と変わらず、優しくて誠実だった。しかし、魔王様とも別れることとなり、今はフリーである。


フリーであるわたしに、親はせっせと他国の王子や姫を紹介してくる。王族であれば、ひとまず肩書きはクリーンだ。わたしももう47歳。人間で言えば結婚適齢期はとうに過ぎてしまっている。親ももう高齢だ。早くわたしが安全に幸せになることを願っているのは分かっている。だが、見合いの相手でぴんとくる人はいないし、それ以外の相手では、身元がはっきりしないため、またアウトローな相手かもしれないと躊躇してしまう。

幸せになりたい。でも、怖い。


もうすぐ48歳を迎えるのに、未だわたしは葛藤し、無駄に日々を過ごしていた。




そんなある日。元カレであるマオに勧められてインストールした恋人マッチングアプリで、とてもクリーンそうな肩書きの人間をみつけた。警察官。ノンキャリの叩き上げのようだが、勤務歴25年。うちの国の人間だ。とても仕事熱心で、国の治安を守ることに尽力しているとのこと。このような相手であれば、親も安心できるのではないか。わたしとしても、好感を持てる相手であるし、このまま交流を深め、一度あってみるのもいいかもしれない。

そうして、わたしの恋活は再び始まった。

BL「魔王様の恋活」おまけ

「魔王様の恋活」おまけ


1
「魔王とより戻した」
「わ~おめでとう~!」
「離婚したときはどうなるかと思ったが、ハッピーエンドでよかったな」
「ハッピーエンドかどうかは死ぬまでわかんねーよ。人生の幸せは日々の積み重ねだからな」
「深いねえ」



2
「魔王の誕生と寿命ってどうなってんの」
「前の魔王が消滅したら自動的に次の魔王が発生する。寿命は自由だな。消滅したいときに消滅できる」
「へえ~」
「過去に、魔界の統治がめんどくさすぎて三日で消滅した魔王とかいるからな。かなり自由だな」
「そう思うと、1576年も魔王やってるってのは長い方なのか」
「まあそうだろうな」
「すげーなお前」
「えへへ」

「唐突にキャラ変えるのやめろよびっくりしたわ。えへへてお前」
「ついうっかりカミールの口調が移った」
「お前カミールと知り合いなのか?」
「まあ一応」



3
「おーいカミール、お前魔王と知り合いなの?」
「えっなになに嫉妬?ねえ嫉妬なの?嫉妬からの挑発セックスから仲直りセックス??」
「裕太おまえカミールを止めてくれ」
「俺にはもうどうにもできない」

「なんの話だったっけ」
「お前と魔王は知り合いなのかって話」
「あー、一応王族紹介したときに連絡先交換したんだよー」
「なるほど」
「それで、どうすれば恋愛がうまくいくかとかいう相談に乗ったりしてた」
「……どんなこと教えたんだ?」
「……嫌な予感」

「それはもう『ピー』で『ピー』『ピー』の『ピー』がいいよ!って」

「R18にもほどがある!!」
「でも魔王様って1576歳でしょ、18禁とか余裕で読めるじゃん」
「確かに」




4
今日は、魔王と会う日だ。
ひとまず駅前で待ち合わせをしている。魔王なので本当は魔界から人間界のどこへでも現れることができるのだが、恋人っぽいことをしたいが為にわざわざ混雑した駅前で待っているのである。

ぼんやりしていると、どこからか悲鳴が上がり、周りの人たちが青い顔をしながら走り去っていった。おっ、来たな。

「おーっす。えらいおめかししてんな」
「まあ……大事な日なので……」

魔王は黒い鞣し革でできたローブを羽織っていた。肩には金の装飾。靴も金のブーツで、まあとにかく魔王感ばりばりにでていた。だれがどうみても魔王である。

「角も磨いたのか?今日超きれいじゃん」
「ご両親にお会いするということで……身だしなみを整えるべく角磨きの店に寄ってから来た……」

青い顔をした魔王。いつもより凄みのある顔である。そりゃみんな逃げるわ。

「お前緊張してんの」
「バーカ緊張などしておりません」
「敬語じゃん、緊張してんだろー」
「してないと申しております」
「手え繋いでやろうか」

差し出した手をぎゅっと握ってくる魔王。手、汗でべちゃべちゃである。

アウトロー中のアウトローである魔王をこんなに緊張させる相手。

それは、うちの両親である。
今日は、俺と魔王との再婚を報告する日なのだ。

波乱万丈の予感。



「おう坊主、久しぶりだな。」
「ハイ……」
「身綺麗にして、今日はどっか行くのか」
「イエ……」
「とーさん、俺こいつと再婚しようと思うんだよね」
「是非とも認めていただきたく……訪問した次第であります……」
「ハァ?????」

その後の展開は想像にお任せするが、結果として魔王は3発殴られ、もう二度と俺を悲しませないという書状に血判を押させられていた。血判て……

「しかし坊主、2年でだいぶ成長したようだな」
「ありがとうございます……」
「まあまあだな、父としてはOKを出そう」
「母もOK」
「最後に一番大事なのは誠司、おまえの気持ちだ。親がなんと言おうと、結婚の意思には介入できない。結局本人たちが決めることだからな」

どうだ?と目で聞いてくる父。不安そうな魔王。
「俺もOKだな。結婚したい。今の魔王なら信頼できると思うし、信頼をより強くしていくこともできると思う」

言い終わった瞬間、魔王はえーんと泣いた。子供かよ……と思いきや、父もえーんと泣いていた。これが大人泣きというやつか。

「今度の式も、いい式にしましょうね」
母が話しかけてくる。
「そうだな。人間界でするか魔界でするか、そこから決めなきゃならないし、忙しくなりそうだ」


愛し愛された関係だ。できるだけいい式にして、いい関係を保って、幸せをだったと満足できる人生を歩みたい。
今日はその一歩を、確実に踏み出した日なのだと感じた。