9×9

オリジナルBL・百合小置き場

目次

更新情報 @ss0usaku

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よければ感想もこちらへ

 

BL

・コーヒー好きの社長とコーヒーショップの店員大学生

 「カウンター越しの恋」(1) (2) (3)(4)(5)(6) (7) 完結

 スピンオフ「武藤さんの朝」(1) (2) (3) 完結

・石油王と大学生

 「石油王は就活中」(1)完結(おまけ)

・神様と新人天使

 「神様のお膝元」

・ゲイとヘテロセクシャルの学生

「A君はお怒り」

・学生の片思い

「治らない痛み」 完結

・魔王と不良

「魔王さまのお連れ合い」(1) (2)完結おまけ 

 スピンオフ・魔王さま頑張る

       「魔王さまの恋活」(1)(2) (3)完結おまけ

      ・第三王子の恋活 

       「王子さまはアウトローがお好き」(1) (2)完結

・元ヤン先輩と落ちぶれ石油王

「待っててください」完結おまけ 

 

 

 

 

百合

・髪の毛フェチの高校生

「彼女の髪の毛」完結

・アイドルファン同士

「magic of love」(1)(おまけ) (2) (2のおまけ)完結

 小ネタ集  増えます

・幼児となぞのふわふわ

「みっちゃんの恋人はふわふわ」(1)(2)(3)  完結(おまけ)

・アイドルとアイドルオタク

 「抱いてください」(1) (2)(3)(4)完結(おまけ) 

・ロリイタと芋ジャージ

「好きな気持ちをまっすぐに」 

サイト移転しました

移転します。移転先はこち

 

 -Caravel-

BL「運命の子拾いました」(7)

BL「運命の子拾いました」(7)


リクくんとメッセージのやりとりを始めて1ヶ月。返信は3日に1回くらいだが、リクくんだけ通知音を変えているので返事が来ればすぐわかる。ささっと返事をすると、10分後くらいに返事が来るので、またささっと返事をする。というような、どうみても自分だけが前のめりなやり取りになっている。恥ずかしい気もするが、どうしようもない。返事が速いのは変態行為にはあたらないはず。

思春期の頃、周りの人間が一生懸命やっていたのはこういうことだったのかと、35歳になって知った。同世代の人間からしたら青いと思われるのだろうな。まあどうでもいいことであるが。

リクくんとのやりとり。話が弾んだときや、彼の機嫌がいいときは、写真を送ってくれたりする。大体食べ物の写真だが、なかなか魔界の食べ物というのはユニークである。そういう写真を見るのも楽しいが、自分は是非ともリクくんが見たい。自撮りとか送り合うのが今の若者文化であるようなので、リクくんも送ってきてくれないかな、と期待したのだが、そういうこともなかった(そういえば彼は128歳だし、若者とカウントしていいのか微妙なところである)。

そろそろ顔が見たい。紳士的にメッセージを送ってきたが、それでは満たされないものもある。どうしても顔が見たい。あの丸っこい顔。小さい角に小さい羽、先のとがった尻尾、くるんとしたつむじ、ちょっと低めで自分を罵る声……想像するだけでかわいさ溢れていてたまらない。会いたい。

魔界に行く方法は知らないので、リクくんにこちらに来てもらおうとメッセージを送った。予想はしていたが、返事はなかった。残念極まりない。

少し、悲しかった。
確かに出会いは悪かった。カイさんから学んで、あとから振り返ってみると自分はまごうことなき変態である。未成年を家に連れ込み、あわよくば撫で回して連絡先を聞こうとするなど、通報されても仕方がない。あれはだめだった。

リクくんが怖がってしまったのも仕方がない。でも、できれば関係を立て直したいのだ。もしくは公園でリクくんを見つけたときに戻ってやり直したい……

ふと、昔の記憶がよみがえってきた。公園。公園での出会いといえば、自分の小さい頃、自分の方が公園で寝込んでしまい、助けられたことがあった。そのときは家族で旅行にいっていたのだけど、なれない場所で迷子になってしまい、やっと見つけた公園で疲れて寝てしまったのである。ようやく起きてみると、自分と同じような年頃の子ども二人が僕を見つめていた。そして、そのあと親に見つけてもらうまで一緒に遊んだのだが……

あのときの違和感。なんだったか。なにか不思議に思っていたような……

うーむ。もやもやしてきたので、リクくんの写真でも見よう。実は、カイさんにも内緒にしているのだが、リクくんの身分証の写真をこっそりスマホで撮って保存してあるのだ。これは自分でもアウトだと思っていたので誰にもいっていない。ちなみに、リクくんを拾った日は眺めることに必死で写真を撮ることを思い付けもしなかった。なので自分が唯一持っているリクくんの写真。少し昔のもののようで、より幼く見えるリクくん……この顔、この顔ではなかっただろうか。


昔、公園で出会ったのは、角や羽のついた子どもだった。そう、カイさんやリクくんのような。
そしてそのうちの一人は、リクくんにそっくりではなかっただろうか。

身分証のリクくんをじっと見つめる。……この子のような気がしてきた。身分証の更新日は28年前……丁度リクくんが100歳のときだ。そしてそのとき自分は7歳。旅行で迷子になったのも7歳のときだ。
他人の顔に興味がなかった自分が、珍しく思い出せる顔。それって、相手が悪魔だったからではないだろうか。


もし、もしあのときの子がリクくんなら。自分はものすごい運命を引き寄せたような気がする。


……あのときの公園にいったら、なにかもっと思い出せるだろうか。あのときの子がリクくんなら。どきどきしてきた。
週末に、行ってみよう。



週末。例の公園でぶらぶらする。記憶にあるより、大分寂れた公園。だけど、確かに自分はここに来たことがある。滑り台、ブランコも記憶にある。ジャングルジムで、3人で遊んだ記憶も。
羽の生えた少年二人と、自分。もう一人の子の顔は思い出せないけれど、角が生えていた子は、やっぱりリクくんだったと思う。

そうして記憶をたどりながらぶらぶらしていると、子どもが二人、ブランコで遊びだした。……あれはリクくんじゃないか!!!

興奮して声をかけたものの、未だ変態呼ばわりされ、しかもアッパーを食らった。しかし、久しぶりに見たリクくんの顔。やはり好みだ……と思いながら気を失ったのであった。



アッパーの衝撃から目覚めてすぐ。
リクくんとカイさんに問うた。あのとき遊んでくれたのはきみたちじゃないか?

カイさんの方は、「たぶんそうだと思う」と答えてくれた。そのとき一緒にいたのはリクくんだというので、やはり記憶の通り、リクくんと自分は過去にであっているらしい。運命だ。

……と盛り上がる自分をよそに、リクくんはものすごく不信感を顕にした顔をしていた。

「確かに昔、ここで人間の子どもと遊んだけど、変態……えっと、かずなりさんだという記憶はない」
「それに、あのときの子は変態じゃなかった。普通の子だったよ」

納得してくれないらしい。あと変態呼ばわりは変わらなかった。1ヶ月のやり取りでは変態の汚名返上は出来ていなかったようである。

「でもきっと、あれはリクくんだったと思う。人間の顔に極端に興味がない自分が覚えていた唯一の顔だ。そんなの、リクくんしかいない」

運命だと思うんだ。

どうにか伝えたくて、必死に説明する。運命だ。運命なんだ。

必死すぎて前のめりになりすぎていたらしい。リクくんとカイさんと一緒にいた不良っぽい男の子に押し戻された。

「昔会っていたからといっても、今は嫌われてるわけだろ?一人で運命感じてたってどうしようもなくね?」

ぐっさりきた。確かにその通りなのである。
リクくんにも運命だと思ってもらわなければ意味がないし、それよりも、自分のあのときの楽しかった記憶を肯定してほしかった。

「……まああのときの子がかずなりさんだとして、そのとき楽しかったのは事実です。でも、誠司さんのいうように、僕は運命は感じないし、あなたのことはこわい」

やはり、そうか。

「正直にいうと、メッセージのやりとりも負担でした。もう、ここで関係を切ってしまいたいです」


……そんなに負担になっていたなんて。すごく申し訳なかった。自分の身勝手な欲望のせいで、困らせていた。

……身を引くしかないと思った。


「負担になってしまって本当に申し訳ない。困らせるつもりじゃなかった。もう、連絡はしないよ」

ごめんね。


そう言って、自分とリクくんの関係は途切れた。

BL「運命の子拾いました」(6)

BL「運命の子拾いました 」(6)



カイと遊ぶ日。なんと、魔王様のお連れ合い様も同行してくださることになった。お連れ合い様は人間だから、人間界に詳しいし、かなり強い不良なので揉め事に巻き込まれても安心だ。人間界に恐怖心を持ってしまった僕を気遣って、カイが頼んでくれたようだ。身に余る光栄だ。

「お連れ合い様、今日は僕なんかのために、ありがとうございます。」
「おう、そんな固くならなくてもいいぜ。誠司って呼んでくれ。俺も久しぶりにクレープ食べたかったからな」

優しい誠司さん。同じ人間でも変態とは大違いだ。流石魔王様と結婚なさった方だ。


そんなわけで、僕とカイと誠司さんは、都会の人混みに揉まれながらも楽しい時間を過ごした。クレープは勿論、ふわふわのかき氷や、もちもちのパンケーキも食べたし、観覧車にも乗った。こんなに高いところから人間界を見下ろしたことなんてない。僕は人間界の「下」に住んでいるし、ぱたぱたとんでもこんなに高いところまで飛んで上がったことはない。カイは「上」から見ているみたいだけど、それとはまた違った風景であったらしく、とても興奮していた。

とっても楽しかった。
最近ごたごたしていて恐怖だけが先走ってしまっていたけれど、やはり人間界にも楽しいことはたくさんある。

「また来ようね」
「楽しかったね」

帰り道。カイと話ながら歩く。誠司さんは僕たちの後ろをのんびり歩いていた。


ふと、懐かしい場所が目に入った。前に人間界に遊びに来たとき、カイと来た公園だ。ブランコ、まだあるかなあ。

「リク、ここ覚えてる?」
「うん、勿論。誠司さん、ちょっとここに寄ってもいいですか?」

いいよ~俺ちょっとそこのコンビニでプリン買ってくるわ。


僕たちはわーいと公園に駆け込んだ。寂れてしまっていたけれども、ブランコはまだあった。嬉しくて、二人で隣り合ってブランコを漕ぐ。

「そういえば、前に来たときは僕たち以外にも人がいたね」
「そうだったっけ?」
「うん、なんか迷子の子かな?リクにすごくなついてた」
「う~~ん?」

思い出せるような、出せないような。

「僕たち、あのとき初めて人間としゃべったんだよ」

ぴーん!思い出した。

「そうだったねー!思い出した。あの子かわいかったね。今どうしてるんだろう。人間だったらもういい歳だよね」
「そうだねー。確か名前も教えてもらったはず……」
「ん……?」
「かず……かずなりとかだったような……」
「いやいや」

変態と同じ名前じゃかわいそうだ。

「いやでもかずなりだった気がするよー」
「えーそんな名前だったっけ」
「そうだよー」

などとしゃべっていたとき。

「やあリクくん呼んだ?偶然だね」


なんと変態が現れたのだった。

「うわー変態だー!!!」

ひえええとカイの後ろに隠れる。すると、コンビニから帰ってきたのか、誠司さんがダダダと走ってきて、「変態だと!?こいつか!」と言って強烈なアッパーをいれてくれた。

ぶっ倒れる変態。
震える僕。
びっくりしたようなカイと、怒った顔の誠司さん。

楽しかったはずの人間界観光が、えらいことになってしまった。



強烈な一撃に気を失った変態。置き去りにすることもできず、変態の目が覚めるまで誠司さんにここのところの出来事をお話しした。

「なるほど、それは確かに変態だな」
「人間界の基準でも変態ですか」
「変態だな」

まずもって出会ったときの会話が最悪だ。そう言う誠司さん。
やっぱり撫でくりまわすのは変態行為らしい。あいつめやっぱり変態だな。

隣で微妙な顔をするカイ。……なんか事情がありそうだけどちょっと今日は触れないことにする。

「うーん、なんか既視感」

唐突に話し出したカイ。

「ねえ、前に公園に来たときも、こうやって人間が倒れてなかった?それで、介抱して、起きた子と一緒に遊んだ気がする」

「さっきの、かずなりって子」

「え~~?そんな偶然ある?」
「……実はあるんだ」

うわっいつの間にか変態が目を覚ましていた。そしてこっちを凝視してくる。こわい。
すぐさま誠司さんの後ろに隠れた。

「この前、リクくんとやり取りをしていたときに、小さかった頃のことを思い出してね。7歳くらいの時かな、都会に観光に来て、迷子になったことがあったんだ」

こちらを凝視しながら話す変態。

「この公園にたどり着いて、眠気にやられて寝てしまって……起きたら羽の生えた子供が自分を介抱してくれていて、そのあと一緒に遊んだんだ」
「そのときの公園がここ。ふいに懐かしくなって、来てみたんだ。そしたら君たちがいた」


「ねえ、あのとき遊んでくれた二人は、君たちじゃないか?」


そう問われた。

BL「運命の子拾いました」(5)

「運命の子拾いました」(5)


カイにお願いされて、しぶしぶ連絡先を変態に教えた日。早速変態から連絡がきた。怖い。まだ変態ショックから抜け出せなかった僕は、一週間ほど放置していた。
でも一週間を越えた辺りから、流石に相手が変態とはいえ、返事しなくちゃならないよね……と思い、メッセージをチェックした。その内容がこれ。

「リクくん、連絡をくれてありがとう。今さらになるが、自分は間宮和成といいます。35歳で、証券会社に勤務中です。またリクくんのプロフィールも教えてくれないだろうか。返事待っています」

今さらにも程がある。
カイに指導を受けてやっとこさこのレベルである。……カイも大変だな。
まあとにかく、これで変態の名前はわかった。かずなりというらしい。

さて、返事をせねばならない。既読スルーでもいいが、最初からそれは失礼に当たるだろう。

ということで返事をしたのだが、どうせ僕のプロフィールは財布の中身を見られた時点で丸分かりだろうし、特に書くべきこともない。ささっと形式的にメッセージを返しておくか。

適当にぽちぽちとメッセージを打ち、送る。すると秒速で既読がついた。こわい!!

「既読スルーでも大丈夫です。また連絡します」

思いの外あっさりとした文面が返ってきた。ぱっと見普通の人だ。しかし既読のスピードは尋常じゃなかった。ずっとスマホを手に待っていたのだろうか。前のメッセージから一週間も経っているのに。こわい。

やはり変態だ。こわい。めちゃくちゃメッセージとか送られてきたらどうしよう……性的なメッセージや写真が来たら……速攻ブロックしなくては。

と、びくびくしていたのだが、意外なことに、変態からのメッセージは普通だった。一日に一回ほど、普通の内容のメッセージが届く。

「今日は暑いね。魔界はどうですか?」
「帰り道に猫をみつけたんだけど、リクくんに似ていたよ」
「仕事が終わりました。疲れたよ。リクくんの一日はどうでしたか?」

など。ま、まともだ……
しかし、こちらからの返信につく既読のスピードは相変わらず異常に速かった。基本的に僕はスマホを持たないので、メッセージも三日に一回にチェックする程度なんだけど、そこで適当に返事をすると、秒速で返事が来る。

返事の内容はまともだ。ただし既読がめちゃめちゃ速い。ギャップが気持ち悪かった。



変態とメッセージのやり取りをするようになって1ヶ月。カイと会うことになった。カイは天界に生まれて、今は天使をやってるけど、僕と生まれた時期が似ていて、仲良しなのだ。

「カイ、久しぶり」
「リクも久しぶり。元気?大丈夫?」

久しぶりに会ったカイは元気そうだった。仕事もうまくいっているみたいで(なんか特殊な事情があるらしいけど)、つやつやしていた。

対して僕は。カイに「大丈夫?」と聞かれるくらい、見た目が悪かったのであろう。正直なところ、めちゃくちゃ疲れていた。

「あの変態、最近どうなの」
「大分ましになってきて、恋活も普通にやってるみたいだけど。」

ましになったという変態。確かにメッセージの内容は普通になった。初対面のときのように、セクシャルに撫で回したいとか言うのはダメだと学んだらしい。それはいい。ただ……

「既読のスピードが速すぎてこわい」
「ああ……」
「なんか監視されてるみたいで疲れる。返事するのも怖くなっちゃった」

ほんとうにまじで既読のスピードが速い。何回おんなじこと言うんだと思われるかもしれないが、本当に速いのである。そしてそれは、僕の負担になっていた。

「なんでこんなことなったんだろう……」
最近はもう、人間界から距離を取っている。前は人間を装ってTwitterとかInstagramとかやってたけど、いまはもうやってない。とにかく人間に接するのが怖かった。

「初めて人間界に行ったときは楽しかったのにね」

そう、僕は一度、カイと一緒に人間界に遊びにいったことがあるのだ。そのときはとても楽しかった。いろんなものが新鮮で、クレープなるものを食べたり、公園で遊んだり。もう30年ほどまえかな?あ、丁度100歳のお祝いで行った気がする。

「あのときは楽しかったのになあ」

はあ、とため息をつく。クレープ、もう一回食べてみたいな。公園のブランコも楽しかった。……でも今では、公園にはトラウマができてしまった。公園には変態がいる。

「カイ、また一緒に人間界に遊びにいこうよ。クレープ食べたい。一人じゃこわいから、一緒に行ってくれる?」
「いいよ。クレープ、僕も食べたかったんだ」

そうして、カイと人間界で遊ぶ約束をした。最近沈んでいた気持ちがちょっと上がる。クレープ!ふふふ。クレープはとても美味しい食べ物なのだ。

クレープ食べたら、久しぶりにInstagramにアップしようかな。Twitterで自慢するのもいいかもしれない。
わくわくしてきた。

「カイのお陰で元気が出たよ。ありがとう」
「僕も久しぶりにあえて嬉しかったよ。こんどの約束も楽しみにしてる」

そうやって笑ってカイと別れた。


その日の夜。相変わらず一日に一回変態からメッセージが届く。今日の内容は、
「一度会って、人間界で遊ばないか?」
だった。なんというタイミング。まじで監視されてるんじゃなかろうか。

気持ち悪かったので、見なかったことにした。カイと遊びにいくことも、絶対内緒にしなきゃ。カイに、変態には遊びにいくこと内緒にしてねってメッセージを送る。

こわい。
絶対に会わないようにせねば。
今度遊びにいく場所は都会で、変態にであった場所とは遠く離れているのだけど、恐怖感はぬぐえなかった。遊ぶ日が楽しみで、だけどこわい。

微妙な気持ちで日々を過ごすのであった。

BL「運命の子拾いました」(4)

「運命の子拾いました」(4)



あの日拾った悪魔のリクくん。リクくんと再会し、魔族とのマッチングアプリと天使を紹介してもらった。
マッチングアプリに登録している魔族のプロフィール画像を見てみると、なるほどなかなか魅力的である。やはり今まで恋愛でピンと来なかったのは、人間の顔立ちに恐ろしく興味が持てなかったせいだな。

何人か、気になる人とやりとりをする。
それと同時進行で、天使による「恋」のレクチャーを受けていた。


「いいですか、愛とは一方通行のものではありません」
「愛し愛されて、やっとカップルが成立するのです」
「相手には誠意をもって接してください。相手には相手の気持ちや事情があります。自分のしたいことだけするなんてことはいけません」


ふむふむ、大変勉強になる。


「カイさん、リクくんと自分がうまくいかなかった原因はなんだと思いますか」
派遣されてきた天使のカイさんに教えを乞う。
「うーん、やはり自己紹介もなしに、自分のやりたいことばかりやったからじゃないですか。怖がられても仕方ないと思いますけど」

なるほど、そういえば自己紹介はしていなかった。ただただ相手と繋がりたいがゆえに連絡先を無理矢理交換しようとしたり、手を出そうとしていた。これはいけないことのようだ。

「がっついていた、というやつでしょつか」
「そうでしょうね」
「大変怖がらせてしまった」
「残念ですね。次からは気を付けてください」

次。
確かに今、色んな魔族と連絡を取っている。近日中に実際会ってみる予定もある。しかし……

「リクくんが一番好みなので、是非ともリクくんの連絡先が知りたいのだが」
「……結構しつこいですよね。粘着質というのも頷けます」
「一途というものではないのだろうか」
「いや、粘着質だと思いますよ」

呆れたようなカイさん。うーむと考え込み、嬉しい提案をしてくれた。

「……まあ、僕の仕事は愛と幸せを運ぶことですから、あなたにも幸せを提供したいところではあります。一度、リクに連絡先をあなたに教えてもいいか、確認をとってみましょうか」

なんと。それはいい。

「断られる可能性も十分高いですからね。期待はしないでくださいよ」
「問題ない」
「もしだめでも粘着しないでくださいね」
「……はい」
「心配だ……」

では、次回までにリクに確認しますから。ひとまず他の魔族との交流を頑張ってください。

そう言って、カイさんは天界へ帰っていった。
希望はある。それだけでドキドキする。
とにかく今は、学んだことを生かして魔族との交流を図ろう。何事も経験だ。

そう決めて、恋活をがんばるのであった。



結果から言えば、全滅だった。
魔族ということで、自分の好みの顔が多かった。しかし、いまいちぴんとこない。

ぴんときていないことが相手にも伝わったのであろう。どの相手とも気まずく、うまくいかなかった。
相手を怖がらせたということはなかったと思う。変態と言われることもなかった。カイさんのおかげで、自分もそれなりに成長はしているらしい。

それが分かっただけでもいいか。そういう気持ちでいたとき。なんと、リクくんから連絡が来た。

歓喜
どうもリクくんからの説得により、メッセージのやりとりくらいならしてもいいと言ってくれたらしい。

早速メッセージを送る。
「リクくん、連絡をくれてありがとう。今さらになるが、自分は間宮和成といいます。35歳で、証券会社に勤務中です。またリクくんのプロフィールも教えてくれないだろうか。返事待っています」

送信。
自己紹介、ちゃんとできた。あとは相手の反応を待つだけだ。わくわくしながら待っていたが、なかなか既読がつかない。
やはり嫌われたのだろうか。がっかりしていたところ、メッセージの送信から一週間後くらいにリクくんから連絡がきた。

「かずなりさん、こんにちは。僕はリクです。どうせ僕の身分証見ただろうから細かい紹介は必要ないですよね。返信が遅かったり、既読スルーも多いですが、それでもよければ連絡くださっても構いません」

ものすごく冷たい反応だった。……たしかに身分証とかめっちゃ見たので、リクくんの年齢も誕生日も知っている。
でも、連絡することは許してもらえたので、どんどんメッセージを送ろうと思う。
……一日一回に抑えなければ。カイさんの教えを思い出す。変態ストーカーと呼ばれたくはない。できるだけ紳士的に、誠実に、しかし情熱をもって頑張ろうと思ったのであった。

BL「運命の子拾いました」(3)

BL「運命の子拾いました」(3)



あれから数日。変態にであってしまったショックでしばらく引きこもった。本当に怖かった。もう人間界にはいかない!!

と、思ったんだけど、非常事態が発生した。財布がない。どこかで落としてしまったようだ。

どこで落としたんだろう。よーくよく考えてみる。ここ数日は家に引きこもってた。その前は人間界に行って……人間界に……

どう考えても人間界で落とした。
そういえば、木に引っ掛かっていたらしい僕。あれ、なんでだったか思い出した。財布を途中で落としたのだ。公園で落とした。それを取りに行こうとぱたぱた飛んでたら、途中でカラスと接触事故を起こして……
そこで気を失って木に引っ掛かっていたのだろう。なるほど思い出した。

思い出したはいいけれども、そうなるともう一度人間界に行かなきゃならない。財布には身分証とか保険証とかも入っている。無くしたらこまるのだ。警察とかに届いてるといいけど。

……人間界、いきたくないなあ。
でも仕方ないので、気合いをいれて人間界に向かったのであった。





財布を落とした公園の最寄りの交番には財布は届いていなかった。ということは、まだ公園にあるか、誰かに持っていかれたかの2択である。でも、僕の財布は魔界のお金しか入ってないし、誰も持っていってないだろうな、地道に探すか……としょんぼりしながら公園に向かった、のだがすぐさま帰りたくなった。あのとき出会った人間が、公園のベンチに座っている。

出会いたくない。変態からは逃げるに限る。身分証とかもういい。全部再発行してもらえばいいのだ。

帰る。帰る!!

とわあわあわしていたら、ぬっと背後に誰かが迫ってくる気配が。
嫌な予感……振り返ってみると、はい出た!変態だ!!!


「やあ、久しぶりだね、リクくん」

名前を把握されている。ということは……

「これ、君の財布だろう?」

僕の財布!中身勝手に見やがったなこの変態!

「僕のです!返してください」
速やかに!速やかに返してくれ僕はもう帰りたい!


「返してもいいよ。でも交換条件として、連絡先だけ教えてほしいなあ」
「くっ卑怯な!なんて卑怯な変態なんだ!」
「変態じゃないよ、君に一目惚れしてしまったんだ。是非仲を深めたいのだけど」

一目惚れ。なんか誠実そうな告白だけど、僕は覚えている。

「仲を深めるとか言って、下心あるじゃないですか。手を出すとか出さないとか、気持ちわるいんですけど。僕まだ未成年ですからね犯罪者め」

いくら僕が人間より歳を取っているとはいえ、僕たちの基準では僕は未成年だ。

「犯罪者と呼ばれるのは悲しいな。僕は本当に一目惚れをしてしまったんだ。手を出すようなことはしないよ。ただ、連絡をとったり、そういうことがしてみたい」

なんせ人生初の恋なので。

意外に思った。こんなに顔が整っているのだから、恋人もたくさんいただろうの思っていたのに、初恋。
聞くところによると35歳らしい。それが、僕に初恋。

「人間の顔に全く興味がなくてね。僕の好みはどうも、君みたいな悪魔のようだ。」


……変わっている。
人間界基準ではモテるのだから、人間と付き合えばいいのに、よりにもよって僕。しかもかなり粘着質。きも。

結論、きもい。


「僕は魔界の中では非常に平凡な顔なので。別の悪魔をお探しください」
「でも、出会いがないよ。そんな中で君とであったのは奇跡だと思う」
「完全なる偶然だと思いますけどね僕は」


粘着質だ。さっさとあきらめてほしい。


「とにか僕にはあなたに付き合う気はさらさらないので。スマホ持ってるなら魔族用の恋人マッチングアプリ使えばいいんじゃないですか」

魔界では最近恋活がはやっている。魔王さまとそのお連れ合い様が魔界に持ち込んだ人間界の文化が、面白いものとして広まったのだ。ちなみにスマホも人間界からの輸入品。大変便利で助かっている。

「そんなものあるか」
「ありますよ。Apple storeなりGoogle playなりでインストールしてくださいよ」
「なるほどありがとう。じゃあ連絡先を教えてくれるか」
「教えねーよ!ほんと粘着質だな!」

もういい!僕は変態からは財布を無理矢理引ったくって空中に飛び出した……

「ぎゃー!」

また尻尾を捕まれた!!

「ひどいよう……いたい……」

べそべそなく僕に、またティッシュをくれる変態。そんな気遣いよりまずもってその変態性をどうにかしろよハゲ。

「連絡先、教えてほしいんだけど」

尻尾を握られながら言われる。怖い。

「離してください」
「離したら、もう君とは会えないだろう」
「当たり前だろ誰がわざわざ変態に会うものか」

変態は困った顔をした。

「変態と言うのはひどいな。僕は君と仲良くなりたいだけなんだ」
「手段がきもいんだよ!」

この人間、自分が何やってるか全然理解できてない!35年間恋愛をしてこなかった人間の、関係性の構築の間違いかたは最悪だった。

「あなた、もうほんとどうしようもないですね。誰かと付き合う前にその変態性をどうにかした方がいいですよ」

ほんとにいつか犯罪者になりかねない。ということで、知り合いの天使を紹介しておいた。愛とは何か、恋とは何かを叩き込んでもらおう。本当は魔王様のお連れ合い様を紹介して、鉄拳教育を施して頂きたかったが、いち一般魔族の僕がそんな大それたことは出来ないので、仕方なく天使に一度預けることにした。相手の天使の方も、了承してくれたので、天使の連絡先を教える。
……ということで、僕がすべきことは終わった。今度こそ帰る!!

もう尻尾を掴まれることのないよう、服のなかに尻尾を隠して思い切り空へ飛び立った。財布もちゃんと持っている。


変態め、今度こそおさらばだ!天使からの指導を受けてせいぜいましな人間になることだな!!